(本記事は弊社の音声コンテンツであるBEt Radioの内容を元に執筆しております)商品開発とは何か商品開発とは、市場のニーズや自社の技術・資源をもとに、新しい商品やサービスを企画し、形にしていくプロセス全般を指します。一般的には、以下のようなステップで進みます。ステップ内容1. 市場調査・ニーズ分析顧客課題、競合動向、市場規模の把握2. コンセプト企画誰に、何を、どう届けるかの言語化3. 試作・検証プロトタイプ作成、顧客反応の確認4. 量産設計コスト、品質、生産体制の確定5. 上市・販売発売、プロモーション、販売チャネル構築このプロセス自体は、多くの教科書やフレームワークで語られており、目新しいものではありません。しかし実務では、このステップを正しく踏んでいるにもかかわらず、担当者が「やらされている」という感覚から抜け出せないケースが少なくありません。ステップという「型」は、楽しさを保証しないのです。なぜ商品開発は「つまらない」と感じられるのか多くの商品開発が「つまらない」と感じられる原因は、企画者自身が主体的に仕掛けていないことにあります。よくあるパターンは、次の3つです。競合の成功事例をなぞるだけの企画海外で流行しているサービスを日本に持ち込む、いわゆるタイムマシン戦略。競合が出した類似商品を自社仕様にアレンジする同質化戦略。これらはヒット確度を高める合理的な手法ですが、企画者自身が「これを世に出したい」という衝動を持てない構造になりがちです。正解ルートを外さないことが目的化した企画「こうあるべき」というフォーマットに従い、理論武装で社内を通す。道を外さないように必死になるプロセスでは、ハンドルを自分で握っている実感がありません。予測可能な反応しか返ってこない企画既視感のある商品は、市場の反応もおおよそ予測できます。「未知への期待」がゼロの状態では、ワクワクが生まれる余地がありません。これらに共通するのは、企画者が「必要なことに応えている」だけで、「自分が仕掛けている」感覚を持てていないという点です。AIがデータをもとに最適な商品企画を提案できる時代が近づいていますが、仮にAIが出した企画を人間が実行するだけの構造になれば、同じ「やらされ感」が生まれ、途中で心が冷めてしまうでしょう。商品開発が「楽しい」と感じられる条件では、冒頭の経営者は、なぜ楽しめたのでしょうか。ポイントは3つあります。①自分たちの文脈(コンテキスト)を商品に乗せたこの経営者のビジョンには「事業も人も社会もサステナブルにしていきたい」という方針がありました。しかし現実には、製造過程で廃材を出し続けている矛盾を抱えていました。その矛盾を解消する打ち手として廃材活用の新商品を開発したことで、ビジョンを体現するプロダクトが生まれたのです。重要なのは、この商品自体は「世の中に代わりとなるものがいくらでもある」カテゴリだったということです。機能やスペックで勝負したわけではありません。自社のビジョン、課題意識、ポリシーという文脈を乗せたことで、「自分たちにしか作れない商品」になったのです。世の中にモノが溢れた今、まったくのゼロから新しいものを生み出すことはほぼ不可能です。しかし、同じようなアウトプットであっても、「何のために」「どういうポリシーで」作ったかが乗っていれば、意味合いはまったく変わります。②主体的に「仕掛けた」感覚があった使命感で動いていた時期は、「必要なことに応える」モードでした。一方、新プロジェクトでは「自分たちがこういうのをやったら面白いんじゃないか」という企みから出発しています。この「仕掛ける側に回る」感覚が、楽しさの源泉になっています。結果がどう転ぶかわからない不安と、だからこそのワクワク。社会実験のような手触り。新商品・新規事業を企画する醍醐味は、まさにここにあります。③ありたい姿と社会的評価が一致した自分たちが体現したかった価値観が、外部からも認められました。ブランディングの観点では「自己認識と他者認識の一致」とも言えます。思いを込めて作ったものが、その思いごと受け取ってもらえた。この体験が、単なる「売上が立った」以上の喜びを生んでいます。商品開発の進め方をコンテキスト視点で再定義する商品開発の現場では、無数の意思決定が求められます。素材、色、形状、価格帯、パッケージ、流通チャネル・・・選択肢は際限なく広がります。このとき、自分たちのコンテキスト(ビジョン・ポリシー・課題意識)が明確であれば、それが判断の軸になります。「自分たちは何のためにこれを作っているのか」に立ち返ることで、ブレない意思決定ができるのです。逆に、コンテキストがないまま市場の売れ筋を参考にすると、開発の途中で「これ、自分たちが売りたかったものだっけ?」という根本的な迷いが生じます。企画者自身がどこかで冷めてしまい、プロジェクトの推進力が失われます。経営層と企画メンバーの間でも、「なぜこれをやるのか」が言語化できていないまま進行すると、双方が迷宮入りするケースは少なくありません。一般的な「進め方」のステップに、コンテキストの視点を重ねると、以下のように再定義できます。一般的なステップコンテキスト視点での問い市場調査・ニーズ分析このニーズは、自社のビジョンや課題意識と接続しているかコンセプト企画「自分たちにしか作れない理由」を言語化できているか試作・検証市場の反応が予測できすぎていないか、未知への期待はあるか量産設計ディテールを詰める段階で、立ち返れる判断軸があるか上市・販売ありたい姿と、外部からの評価は一致しているかなお、商品開発に必要な能力として「マーケティング知識」や「デザイン思考」といったスキルセットが語られることが多いですが、本質的に問われているのは、こうした問いに向き合い続ける姿勢そのものです。スキルは、問いが定まった後に機能するツールに過ぎません。技術革新だけではない「新しさ」の作り方新商品というと、新技術による機能的な差別化を連想しがちです。しかし、新技術なしには成り立たない新しさは、研究開発に大きな投資ができる一部のメーカーに限られます。大多数の企業にとって現実的な差別化ポイントは、UX(ユーザー体験)の違いです。商品が届いてから、開梱し、手に取り、使い、メンテナンスし、最終的に処分するまでの一連の体験。機能的な違いがなくても、ポリシーを持って設計されたUXは、確実に差を生みます。LINEのスタンプは「絵で気持ちを伝える」という、はがきの時代から存在していたコミュニケーションをテクノロジーと掛け合わせて再発明した事例です。ぷっくりシール(ドロップシール)のブームも、かつて存在した膨らんだシールを現代の文脈で再提示したものです。「古くて新しい体験」は、世代が変わるだけで新鮮に映ります。つまり、UX視点での新しさは枯渇しません。社会的な文脈の変化、世代交代、技術との掛け算・・・組み合わせの余地は無限にあります。ここにこそ、新商品・新規事業としての価値の源泉があります。まとめ|楽しいものづくりへの転換チェックリスト最後に、商品開発や新規事業の企画に携わる方が、プロジェクトを「楽しいものづくり」に転換するための問いをまとめます。チェック項目問い①文脈の確認自社のビジョンや課題意識を、この商品に乗せられているか。「自分たちにしか作れない理由」を言語化できるか②主体性の確認このプロジェクトは「仕掛けている」感覚があるか。それとも「正解ルートを外さないように走っている」だけか③未知への期待市場の反応が予測できすぎていないか。「やってみたらどうなるんだろう」というワクワクがあるか④順序の確認自分たちの軸を持った上で成功事例を参考にしているか。事例ありきで企画を組み立てていないか⑤判断軸の有無ディテールを詰める段階で、立ち返れるコンテキストがあるか商品開発の楽しさは、主体性とコンテキストの掛け算から生まれます。市場分析やデータ活用は重要なツールですが、それらはあくまで「自分たちが何を仕掛けたいか」が定まった後に機能するものです。進め方の順序を間違えず、自分たちの文脈を乗せた商品開発を実践することが、結果としてチームのエネルギーを最大化し、市場にも届く商品を生み出す鍵になるはずです。コンテキストを明確化し、新商品・事業を作っていきたい方や、一緒に開発、販売していきたい方はぜひご連絡ください。